- 学部・研究科
Faculty/Graduate School - 理工学研究科
- 時間割コード
Course Code - 93194
- 科目名
Course title
サブテーマ
Subtitle - M非線形数理
- 授業形態/単位
Term/Credits - クラス
Class -
- 春/2
- 担任者名
Instructor - 藤 定義
- 曜限
Day/Period - 木2
- 授業概要
Course Description
到達目標
Course Objectives -
授業種別 / Teaching Types
講義(対面型)
言語 / Language
日本語(Japanese)
授業概要 / Course Description
物理学が扱う現象の多くは、基礎方程式に従い時間発展を行う。非線形性が系を支配するようになると、解析的にはもちろん数値計算を用いても、創発される興味深く不思議な多様な振る舞いの記述は難しくなる。本講義では、解析に拘泥することなく、できるだけ具体的な自然現象を扱い、実験(動画)や数値計算を用いて現象の面白さに触れつつ、非線形現象の理解を深める。
系に支配パラメターがある場合には、このパラメターを変化させると、水が氷るように、臨界値の前後で系の性質が変化する分岐が起きる。臨界点近傍の振る舞いや一連の系の変化は、普遍性を持ち、現象に依らない記述が可能である。それぞれの現象では、特有の時空パターンが現れることからパターン形成の問題として定式化されてきた。更に、カオスと呼ばれる決定論的不規則性を持つ解が存在することや、その不規則性が鋭敏な初期値依存性、いわゆるバタフライ効果、に基づくことが明らかになった。
一方、時空パターンは、物理現象に限らず、化学や生物でも観測されるため、現象を記述する非線形なモデルが提案され、現象の理解が進んでいる。このような、非線形な時間発展方程式に従う系を力学系と呼ぶ。非線形な発展方程式を用いたモデル化は、自然現象に限らず、広く社会科学の現象にも応用され、複雑系と総称されている。
物理においても実験などで時系列が得られた場合に、それを記述する力学系が求まれば現象を理解するうえで望ましいが、時系列は一般にカオス的な不規則性を示すため解析的な方程式系を得ることは難しい。
近年、機械学習を利用することで力学系を数値的に求める研究が進んでいる。本講義では、その一つであるリザバーコンピューティングモデルを機械学習の基礎と共に紹介する。計算機実習も状況に応じて行う予定である。
以上のように、力学系を使って時間(および空間)発展を記述することで、非線形現象の普遍的な理解が可能となる。
本講義では、常微分方程式に従う低次元力学系と時空的発展を扱う偏微分方程式に従う多重度(原理的には無限自由度)力学系を扱い、解の分類、解の分岐、カオスや乱流の力学系的記述に対して、具体的な現象を例題として数理科学的な解析手法を学び、現象の理解を深める。
最初に述べたように、できるだけ数値計算を用いて現象に触れること前提に講義を進めるので、数値計算手法の紹介や数値計算を用いた実習も行う予定である。学位授与方針との関係 / Related Diploma Policy
(理工学研究科(M理工学))
1.知識・技能
到達目標 / Course Objectives
①力学系を記述する基礎概念や数理的手法を習得する。
②具体的な現象を記述する個々の非線形方程式に対して、力学系の数値計算手法や数理的手法を適用し、現象の多様な振る舞いを記述する。
③様々な自然現象を力学系の概念や手法を用いて考察し理解する。授業手法 / Teaching Methods
・教員による資料等を用いた説明や課題等へのフィードバック
- 授業計画
Course Content -
授業計画 / Course Content
以下の授業計画に基づき講義を行うが、受講生の習熟度に応じて内容を修正することもある。
第1回力学系とは
第2~7回:低次元力学系
・散逸系と保存系の力学
・分岐現象の数理
・周期運動とリミットサイクル
・カオス力学:決定論的揺らぎの生成とその記述
・生物リズムと力学系:歩行モデル、神経回路、化学反応
・熱対流とローレンツカオス
第8~11回:多重度(無限自由度)力学系:時空パターン形成
・臨界点近傍での摂動論:パターンの選択則
・界面ダイナミクスと長波近似
・周期パターンの変調と振幅方程式
・生物のパターンと反応拡散方程式
12~14回:力学系と機械学習
・機械学習とは
・時系列パターン認識と高速機械学習
・リザバーコンピューティング
15回:まとめ
授業時間外学習 / Expected work outside of class
本講義では、微分方程式を用いた計算を行うが、計算の途中をすべて提示することはできないので、各自でフォローするようにしてください。また、非線形方程式の解は数値計算で確かめることを勧めます。数値計算を用いたレポートや関連資料なども紹介しますので、理解を深めるために利用してください。
- 成績評価の方法・基準・評価
Grading Policies /
Evaluation Criteria -
方法 / Grading Policies
定期試験を行わず、平常試験(小テスト・レポート等)で総合評価する。
履修者数が多数になった場合には、成績評価方法を「定期試験(16週目)」に変更することがあります。
成績評価方法が変更になった場合は、インフォメーションシステム等で連絡します。基準・評価 / Evaluation Criteria・Assessment Policy
以下の項目に対する理解度
①力学系を記述する基礎概念や数理的手法を習得する。
②具体的な現象を記述する個々の非線形方程式に対して、力学系の数値計算手法や数理的手法を適用し、現象の多様な振る舞いを記述する。
③様々な自然現象を力学系の概念や手法を用いて考察し理解する。
- 教科書
Textbooks
特に教科書は指定しません。講義ノートを開示しますので、復習に使ってください。
-
参考書
References 郡宏、森田義久 生物リズムと力学系 共立出版
太田隆夫 非平衡系の物理学 裳華房
岡本久、藤井宏 岩波講座 応用数学 非線形力学 岩波書店
望月敦史 理論生物学概論 共立出版
西浦廉政 岩波講座 現代数学の展開 非線形問題1 パターン形成の数理 岩波書店
S.ウィンギス、丹羽敏雄監訳 非線形の力学系とカオス Springer
桑村雅隆 パターン形成と分岐理論 共立出版
田中剛平、中根了昌、広瀬明 リザバーコンピューティング 時系列パターン認識のための高速機械学習の理論とハードウェア 森北出版
田中章詞、富田昭夫、橋本幸士 ディープラーニングと物理学 原理がわかる、応用ができる 講談社
講義ノートを作成するために参考にした図書です。これらはかなり専門的なものですので、参考程度にとどめておきます。具体的な現象は講義中にわかりやすい解説や動画を紹介するつもりです。
- フィードバックの方法
Feedback Method
- 担任者への問合せ方法
Instructor Contact オフィスアワー
講義の終了時やメールで随時受け付ける.
その他
メールアドレス:toh.sadayoshi.3c♪kyoto-u.jp ※「♪」を「@」に置き換えてください.
- 備考
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