2025 年度の講義概要のデータベースを検索します。カリキュラムツリーへのリンク
学部・研究科
Faculty/Graduate School
法務研究科(法科大学院)
時間割コード
Course Code
96016
科目名
Course title
サブテーマ
Subtitle
民法5
授業形態/単位
Term/Credits
クラス
Class
/2
BF1
担任者名
Instructor
脇 由紀
曜限
Day/Period
木3
授業概要
Course Description
到達目標
Course Objectives

授業種別 / Teaching Types

講義(対面型)

言語 / Language

日本語(Japanese)

授業概要 / Course Description

債権担保法として、人的担保・物的担保を総じて講ずる。
人的担保は、民法典の体系上は債権総則に位置するが、その主たる制度目的は債権担保にあるから、これを担保物権その他の物的担保とまとめて扱うものである。
民法及び関連法規の条文を、法律要件分類に留意して丹念に読み取ることが何より重要であることを理解させたい。

学位授与方針との関係 / Related Diploma Policy

(法科研究科(専門職))
1.知識・技能
  高度職業人たる法曹として自立して活動するために必要とされる高度な理論に裏打ちされた実務的・実践的な知識・技能を修得することができる。
  実務的・実践的な知識・能力を総合的に活用することができる。
2.思考力・判断力・表現力等の能力
  高度な考動力を発揮して、複雑・多様化する現代社会における法的問題を自ら発見して解決することができる。

到達目標 / Course Objectives

①知識・技能の観点
債権担保法の基礎的知識を、手続法(民事執行法・破産法)との連携関係を含め、判例通説の水準において修得することが求められる。

②思考力・判断力・表現力等の能力の観点
テクニカルタームと法的三段論法の駆使能力を身につけることが求められる。

③主体的な態度の観点
「論理的に考える」思考習慣を獲得しようと努めることが求められる。

授業手法 / Teaching Methods


・双方向性の実質を確保して講義を行う。

授業計画
Course Content

授業計画 / Course Content

01)債権担保序論
債権の人的担保・物的担保のアウトラインを講述する。

02)分割債務の原則と全部義務の諸相・機能
分割債務が債務者の無資力危険を分散させることにより人的担保機能を発揮することを踏まえたうえで、連帯債務・保証債務等の全部義務関係ではさらに債務者の一人の無資力危険が債権者から他の債務者に転嫁されることにより人的担保機能が発揮されることにつき、破産手続開始時現存額主義を軸として講述する。

03)連帯債務の対外的効力・影響関係
連帯債務について、債務者対等の観点から、その対外的効力及び債務者間の影響関係を講述する。

04)連帯債務の求償関係
連帯債務者間の求償関係を、事前通知による抗弁遮断および事後通知による後発善意弁済優先阻止の制度に関する要件事実論的理解に留意して、講述する。

05)保証債務の対外的効力・影響関係
保証債務の対外的効力・影響関係につき、主債務に対する保証債務の附従性・補充性を踏まえ、連帯保証債務における補充性の喪失に留意して、講述する。

06)保証債務弁済による求償関係につき、受託保証人・無委託保証人の区別を踏まえ、事前通知による抗弁遮断および事後通知による後発善意弁済優先阻止の制度に関する要件事実論的理解に留意して、講述する。共同保証人間の求償関係にも言及する。

07)物的担保の体系概観
典型物的担保と非典型物的担保の区別を踏まえ、担保物権の体系を、各担保物権の成立根拠(契約または法規)および効力(留置的効力または優先弁済力)の観点から講述する。

08)抵当権の実行における手続と実体の融合(1)
抵当権の核心的効力である優先弁済力が自己換価力によって支持される一方で、抵当権の不存在・消滅を理由とする不服申立てはこれを決定手続によってすることができること、また、債務者抵当の場合に被担保債権の摑取力に一定の制限(不足額責任主義)を与えることについて、講述する。

09)抵当権実行における手続と実体の融合(2)
抵当権実行手続の3類型(担保不動産競売・担保不動産収益執行・物上代位権行使)がそれぞれ民法の規定に実体的根拠を有することを確認したうえで、担保不動産競売に際し、買受人の所有権取得が手続公信力によって保護されること、抵当権等の担保物権につき消除主義が採られること、留置権については引受け主義によって事実上の優先弁済がもたらされることについて、講述する。

10)同主共同抵当における割付主義・後順位担保権者代位
同主共同抵当権者の抵当権実行時期選択の自由が各抵当不動産上の後順位担保権者の利益を抑圧する結果となることを回避するために、同時配当における割付主義および異時配当における後順位担保権者代位の制度が設けられていることについて、異主共同抵当の場合における弁済者代位の制度との関係を踏まえ、講述する。

11)法定地上権
民法上および民事執行法上の法定地上権を、土地とその地上建物の一方又は双方が強制売却される場合に、私的自治による建物存続を期待できない限りにおいて私的自治の外から法律が直接に建物存続のための敷地利用権を成立させる制度として理解させる観点から、講述する。土地建物同主共同抵当設定後に建物の取壊し・再築がなされたケースについて全体価値考慮説を採用した判例の趣旨に言及する。

12)物上代位権行使に伴う諸問題
物上代位と相殺、物上代位と債権譲渡、物上代位と差押・転付命令といった諸問題につき、債権執行手続の基本的知識を踏まえ、その解決を導く基本的な考え方を講述する。

13)譲渡担保(1)
特定動産譲渡担保の基本的法理を、所有権的構成・担保権的構成といった神学論争に巻き込まれることなく、実質的観点から講述する。

14)譲渡担保(2)
譲渡担保のバリエーションとして、集合動産譲渡担保、集合流動動産譲渡担保、特定不動産譲渡担保、特定債権譲渡担保、集合債権譲渡担保、集合流動債権譲渡担保、将来債権譲渡担保などにつき、それぞれの留意点を講述する。

15)債務者破産における物的担保権の処遇
担保目的物の帰属主体である債務者につき破産手続開始決定がなされた場合に、民事留置権、商事留置権、一般先取特権、特別先取特権、質権、抵当権、譲渡担保権、留保所有権などがそれぞれどのような処遇を受けるかを講述し、債権者がその利益のために物的担保を獲得しておくことの真正の意義を理解させる。

授業時間外学習 / Expected work outside of class

授業では、その履修範囲の骨格部分に集中してその理解獲得をめざすから、残余の部分については各自の学修に委ねざるを得ない。オフィスアワー等を利用してできるだけ支援するが、各自において積極的かつ自主的に知識の範囲を広げ、共通到達度確認試験や司法試験短答式試験への対応力を高めるよう努めてもらいたい。

成績評価の方法・基準・評価
Grading Policies /
Evaluation Criteria

方法 / Grading Policies

定期試験(筆記試験)の成績で評価する。
定期試験100%
授業内の質疑に対する応答の内容はこれを成績評価資料としないが、主体的かつ真摯に応答しようとする態度や論理的に考えようとする姿勢に著しく欠けていると認めるときは、消極評価を行う。

2024年度:S→1名、A+→1名、A→2名、B+→3名、B→3名、C+→2名、C→2名、F→6名

基準・評価 / Evaluation Criteria・Assessment Policy

①知識・技能の観点
債権担保法の基礎的知識を、手続法(民事執行法・破産法)との連携関係を含め、判例通説の水準において修得することができているか。

②思考力・判断力・表現力等の能力の観点
テクニカルタームと法的三段論法の駆使能力を身につけることができているか。

③主体的な態度の観点
質疑に対し、主体的かつ真摯に応答し、また、論理的に考えようとする姿勢に欠けるところがないか。

教科書
Textbooks

潮見佳男  民法(全)第3版  有斐閣  978-4-641-13885-8
田井義信(監修)、笠井修・吉永一行・上田誠一郎・下村正明  ユーリカ民法3債権総論・契約総論第2版  法律文化社  978-4589042705

参考書
References

田髙寛貴・白石大・鳥山泰志  担保物権法第2版  日本評論社  978-4-535-80687-0
道垣内弘人  担保物権法第4版  有斐閣  978-4-641-13776-9
潮見佳男・道垣内弘人  民法判例百選Ⅰ総則・物権第9版  有斐閣  978-4641115620
窪田充見・森田宏樹  民法判例百選Ⅱ債権第9版  有斐閣  978-4641115637

フィードバックの方法
Feedback Method

担任者への問合せ方法
Instructor Contact

オフィスアワー:追って公示する。

その他:授業各回直後に一定のクエスチョンタイムを確保するよう努める。個別連絡にはメールを利用されたい(メールアドレスは別途告知する。)。

備考
Other Comments

条文を精確に読み取ることが何よりも肝要である。その読み取りの手助けのために諸書籍がある。この主従の関係を決して誤解しないようにされたい。

講義の内容・進度は、質疑応答を経て測定される受講者の理解深度に応じて流転する。この意味において授業は生き物であり、したがって、授業計画の記載は、各回の講義内容を固定的に示すものではない。

レジュメ等の補助教材の配布は、原則としてこれを行わない。司法試験にCBT方式が導入されても、平素から自分の手を動かして自分だけのノートを作ることが知識の獲得と定着のために重要な役割を果たすことに変わりはないからである。なお、受講者各自において各種の機器を利用することは、授業進行の支障となる等特段の事情のない限り、妨げられない。