- 学部・研究科
Faculty/Graduate School - 環
- 時間割コード
Course Code - 64280
- 科目名
Course title
サブテーマ
Subtitle - 待ち行列システム
- 授業形態/単位
Term/Credits - クラス
Class -
- 秋/2
- 担任者名
Instructor - 木村 俊一
- 曜限
Day/Period - 水2
- 授業概要
Course Description
到達目標
Course Objectives -
言語 / Language
日本語(Japanese)
授業概要 / Course Description
銀行のATMを利用する客が行列を作っている光景をよく見かける。この行列が本講義のテーマである待ち行列(queue)である。待ち行列は人の行列に限られる訳ではない。交通、情報通信、生産などの社会基盤には、マクロからミクロに至る様々なレベルで待ち行列が現れる。一般的に、待ち行列はサービスを要求する客、サービスを提供する施設、待合室の容量、サービス規律などの様々な要素によって構成されるサービスシステムである。客の到着時間間隔とサービス時間は確率変数として与えられ、このために行列長や待ち時間は確率的で複雑な挙動を示す。
本講義では、社会基盤に現れる多様な待ち行列システムの設計・運用のための確率モデルを学ぶ。単独の待ち行列のモデル分析に加えて、サービス施設をネットワーク内のノードに対応させ、あるノードから別のノードへ客が確率的に遷移するネットワーク型サービスシステムについても考察する。このようなシステムは待ち行列ネットワーク(queueing network; QN)とよばれ、交通網、情報ネットワーク、通信網、生産ラインなどにおける混雑・輻輳現象の数理モデルとみなすことができる。到達目標 / Course Objectives
① 出生死滅型待ち行列とジャクソンネットワークに関する基礎知識を用いて、システム設計をすることができる。
② M/G/1待ち行列とその拡張に関する知見を得ることで、より複雑な混雑・輻輳現象に対処できる。
- 授業計画
Course Content -
授業計画 / Course Content
第1週:待ち行列モデル(1) 待ち行列システム
20世紀初頭からのこの1世紀の間に、様々な待ち行列システムに対して数理モデルが開発されてきた。歴史的に古い順に紹介する。
第2週:待ち行列モデル(2) ポアソン到着
客の到着は事前に予見できない不確実性をもち、きわめてランダムネスの高い確率過程であると予想される。そのような到着過程としてポアソン過程の性質について学ぶ。
第3週:待ち行列モデル(3) リトルの法則
待ち行列理論の普遍的な原理であるリトルの法則、一般化リトルの法則、率保存則とその応用について学ぶ。
第4週:出生死滅型待ち行列(1) M/M/s待ち行列
出生死滅過程によって定式される待ち行列の中で、最も基本的なM/M/s待ち行列について学ぶ。
第5週:出生死滅型待ち行列(2) 機械修理人モデル
多重アクセス計算機システムなどの性能評価に現れる有限の母集団から客が到着するM/M/s/・/K待ち行列について学ぶ。
第6週:出生死滅型待ち行列(3) 損失モデル
待合室がないために客が待つことができない待ち行列システムのモデルであるアーラン損失モデルとエングセット損失モデルについて学ぶ。
第7週:出生死滅型待ち行列(4) 途中放棄モデル
コールセンターに特有の、行列客が途中でサービスを受けるのを諦めて離脱する待ち行列システムのモデルについて学ぶ。
第8週:M/G/1待ち行列(1) 系内客数
一般サービス時間分布にしたがう単一窓口待ち行列の系内客数過程の定常的な挙動を、離散時間マルコフ連鎖を用いて解析する。
第9週:M/G/1待ち行列(2) 待ち時間と稼働期間
定常状態における待ち時間と稼働期間を解析する。
第10週:M/G/1待ち行列(3) 有限容量M/G/1待ち行列
有限待合室をもつM/G/1待ち行列の定常状態における特性を解析し、無限待合室をもつシステムとの関係について調べる。
第11週:GI/M/1待ち行列
M/G/1待ち行列と双対な関係にあるGI/M/1待ち行列の定常状態における特性を解析する。
第12週:待ち行列ネットワーク(1) マルコフ型経路選択
ネットワーク構造をもつサービスシステムの基本モデルであるジャクソンネットワークについて学ぶ。
第13週:待ち行列ネットワーク(2) 開放型ジャクソンネットワーク
客がQN外部からネットワーク内の任意のサービス施設に到着し、サービスを受けた後に最終的には任意の施設からQN外部へ退去する開いたQNを、多次元出生死滅過程を用いて定式化し、系内客数の定常分布と特性量を導出する。
第14週:待ち行列ネットワーク(3) 閉鎖型ジャクソンネットワーク
外部からの客の到着と外部への客の退去がない閉じたQNの定常分布とその計算アルゴリズムについて学ぶ。
第15週:本講義のまとめと到達度の確認授業時間外学習 / Expected work outside of class
教科書とノートを読み返し、授業内容の理解に努めるよう復習をすること。
- 成績評価の方法・基準
Grading Policies /
Evaluation Criteria -
方法 / Course Content
定期試験を行わず、到達度の確認(筆記による学力確認)と平常成績で総合評価する。到達度の確認(70%)、平常成績(小テスト・宿題など)(30%)
基準 / Evaluation Criteria
評価総点の60%以上を合格とする。ただし、出席回数が総授業回数の70%に満たない者は不合格とする。休講がない場合、第14週以前に5回以上欠席した者は、筆記による学力確認の結果に拘わらず不合格とする。
- 教科書
Textbooks 木村俊一 著 『待ち行列の数理モデル』 (朝倉書店) 2016年8月刊行予定
-
参考書
References 塩田茂雄・河西憲一・豊泉 洋・会田雅樹 著 『待ち行列理論の基礎と応用』 (共立出版) ISBN: 978-4320123496
- 備考
Other Comments 学習・教育目標:◎(A,B)、○(E)
オフィスアワー:t.kimura@kansai-u.ac.jp 宛にメールで申し出ること。
春学期開講科目「オペレーションズ・リサーチⅡ」の履修を前提として講義する。
関連科目:「信頼性工学」