2016 年度の講義概要のデータベースを検索します。
学部・研究科
Faculty/Graduate School
時間割コード
Course Code
64275
科目名
Course title
サブテーマ
Subtitle
金融工学入門
授業形態/単位
Term/Credits
クラス
Class
/2
担任者名
Instructor
木村 俊一
曜限
Day/Period
金1
授業概要
Course Description
到達目標
Course Objectives

言語 / Language

日本語(Japanese)

授業概要 / Course Description

交通、情報通信、流通システムは環境都市工学が扱う典型的な社会基盤であるが、いずれも経済と切り離して考えることはできない。経済・金融システムにおける不確実性あるいは不安定性は、社会基盤を構成する各システムに大きく影響を与える。この意味で、経済・金融システムも広義の社会基盤と考えられる。現代の金融システムが最先端の金融技術によって支えられていることは周知の事実である。しかし、金融技術あるいはその学問的体系である金融工学への取組みは、欧米に比して10年の遅れがあると指摘されている。また、金融工学の理論は、単に金融システムの問題だけに止まらず、開発事業における投資プロジェクト戦略や地球温暖化対策の一環である排出量取引などの環境政策にも広範に応用されている。原油市場価格の不確実性の下で、原油採掘事業を開始すべきかどうか?将来の水需要の不確実性の下で、長期の建設期間を要するダムを造るべきかどうか?長期低落傾向にある不動産市場の動向を踏まえて、計画中の都市再開発事業を進めるべきかどうか?こうした不確実環境下における意思決定は、企業あるいは公共事業体の財務に関する最重要テーマの一つである。

本講義では、環境都市工学におけるこうした金融工学教育の重要性を踏まえて、いずれもノーベル経済学賞に輝く金融工学の基礎となった研究成果であるポートフォリオ選択とオプション価格評価について学習する。

到達目標 / Course Objectives

①  金融工学の基礎概念を理解する。
②  ポートフォリオ選択の基礎モデルの考え方と経済学的解釈を理解する。
③  ブラック・ショールズの公式の導出と応用の方法を習得する。

授業計画
Course Content

授業計画 / Course Content

第1週:ファイナンスの基礎概念
 金融工学を学ぶにあたって理解しておかなければならない金利、現在価値、株式、債券などの基礎的な用語と制度について解説する。
第2週:派生資産
 金融資産や商品・不動産などの実物資産の価値に基づいて、その価値が定められる契約を派生資産あるいはデリバティブという。先渡契約、先物契約、さらには開発事業における投資プロジェクト評価などの応用上重要な派生資産であるオプションについて解説する。
第3週:リスクとリスクヘッジ
 リスクとは何か?その分類とリスクを回避・低減する方法について学ぶ。
第4週:裁定機会
 複数の市場で同時に取引を行い、無リスクで確実な利益を得る投資機会を裁定機会という。裁定機会の基本原理とその応用として、オプション価格に対する裁定制約式を導出する。
第5‐7週:ポートフォリオ選択
 投資を行う際に、リスクとリターンの関係を定量的に理解しておくことは重要である。複数の投資対象への資産の基本的な最適配分方法であり、ノーベル経済学賞の対象となった平均・分散モデルについて解説する。投資収益率に関して、一定の平均リターンを満足する資産配分方法の中でリスク指標である分散を最小化する資産の組合せを最小分散ポートフォリオという。ある二次計画問題の最適解である最小分散ポートフォリオの性質と資本資産評価モデル(CAPM)について学ぶ。
第8週:ランダムウォーク
 株価過程を表現する簡単な離散時間確率過程としてランダムウォークを導入する。
第9週:ブラウン運動
 金融工学において株価過程の標準モデルとして用いられる幾何ブラウン運動と、その基礎となるブラウン運動について学ぶ。
第10週:二項モデル
 ポートフォリオ選択と並んで、派生資産の価格評価は金融工学とその応用における主要な研究テーマである。オプション価格評価において、単純ではあるが汎用性をもつ二項モデルを解説する。ある種のランダムウォークである多期間二項モデルを定義し、ヨーロピアンオプション価格に対する明示的な公式を導出する。
第11週:二項モデルの連続化
 中心極限定理を用いて、多期間二項モデルを定義するランダムウォークから幾何ブラウン運動過程が導かれることを示す。
第12週:ブラック・ショールズの公式
 ノーベル経済学賞となった画期的な研究成果であるオプション価格式とその性質について解説する。
第13週:他の派生資産への応用
 ブラック・ショールズの公式が、通貨オプション、先物オプション、普通社債、転換社債などの他の派生資産価格評価に応用できることを示し、その広い適用可能性について論ずる。
第14週:リアルオプション
 投資プロジェクト価値の古典的な評価法である正味現在価値(NPV)法と、金融工学から派生した新しい評価手法の一つで、延期や中止などの将来のマネジメントの柔軟性を評価に組み入れたリアルオプション・アプローチを解説する。
第15週:本講義のまとめと到達度の確認

授業時間外学習 / Expected work outside of class

授業資料、教科書、ノートを読み返し、授業内容の理解に努めるよう復習をすること。

成績評価の方法・基準
Grading Policies /
Evaluation Criteria

方法 / Course Content

定期試験を行わず、到達度の確認(筆記による学力確認)と平常成績で総合評価する。到達度の確認(70%)、平常成績(小テスト・宿題など)(30%)

基準 / Evaluation Criteria

評価総点の60%以上を合格とする。ただし、出席回数が総授業回数の70%に満たない者は不合格とする。休講がない場合、第14週以前に5回以上欠席した者は、筆記による学力確認の結果に拘わらず不合格とする。

教科書
Textbooks

木村俊一  著  『金融工学入門-ポートフォリオ選択とオプション価格評価の基礎-』  (実教出版)  ISBN:  978-4407301168

参考書
References

相田  洋・茂田喜郎  著  『NHKスペシャル  マネー革命〈第2巻〉金融工学の旗手たち』  (日本放送出版協会)  ISBN:  978-4140842171 木村俊一  著  『ファイナンス数学』  (ミネルヴァ書房)  ISBN:  978-4623059454

備考
Other Comments

学習・教育目標:◎(A)、○(E)
オフィスアワー:t.kimura@kansai-u.ac.jp  宛にメールで申し出ること。
本講義受講希望者は、春学期開講科目「確率モデル分析」を必ず履修すること。「統計モデル分析」も併せて履修することが望ましい。
関連科目:「オペレーションズ・リサーチⅠ/Ⅱ」