2025 年度の講義概要のデータベースを検索します。カリキュラムツリーへのリンク
学部・研究科
Faculty/Graduate School
法/文/経/商/社/政策
時間割コード
Course Code
82005
科目名
Course title
サブテーマ
Subtitle
宗教学概論a
授業形態/単位
Term/Credits
クラス
Class
/2
F
担任者名
Instructor
磯 忠幸
曜限
Day/Period
水6
授業概要
Course Description
到達目標
Course Objectives

授業種別 / Teaching Types

講義(対面型)

言語 / Language

日本語(Japanese)

授業概要 / Course Description

この講義は、「宗教学」が扱う主題のいくつかを取り上げて、それに関わる基本的な学説や理論を考察することを基本として展開します。
各講義回は、ランダムに主題が選ばれているように見えます(実際、各講義回は一話完結の体裁をとります)。累積的な議論になるわけではありませんが、各講義回の内容は蜘蛛の巣状に連関されていて、全体として「宗教学」という研究分野を俯瞰できるように構成されています。
馴染みのないトピックス、宗教とダイレクトに結び付きそうにない題材を取りあげることも多いですが、受講するみなさんに宗教事象に対する柔軟で多様なパースペクティブを身につけてもらうためです。

到達目標 / Course Objectives

①知識・技能の観点
「宗教学」がどのような研究分野なのかを理解できる。
②思考力・判断力・表現力などの能力の観点
「宗教学」が問題としている主題やその学説などを、基本的な理解を前提として、論理的に説明し、表現できる。
③主体的な態度の観点
「宗教学」が取り扱う諸問題を自らの関心に関連付けようとする意欲を高めることができる。

授業手法 / Teaching Methods

・教員による資料等を用いた説明や課題等へのフィードバック

授業計画
Course Content

授業計画 / Course Content

第1回  導入(宗教学という分野)
 「宗教学」は<宗教を研究する学問分野>の代表なのですが、「宗教学とは何か?(どういうことを研究しているのか?)」については、一般的にそれほど知られているわけではありません。そもそも、「宗教」は歴史が古いのに、「宗教学」が確立されたのは20世紀の前半のことですから…などと講義で話し始めると、ますます混乱しますよね。そこで1回目の講義は、「宗教学概論」というタイトルの講義でもあるわけですし、「導入」ということで、「宗教学」が確立される経緯と背景を「神学」と対比させながら、お話しすることで、「宗教学とは何か?」ということに関して、この講義を展開するにあたってのコンセンサスのようなものを提示します。

第2回  禁忌(タブー)とその仕組み
 旧約聖書の「レビ記」には「清浄と不浄」についての規定が記されているのですが、それがどのような規則性で規定されているのかということについての考察を手がかかりにして、「禁忌」と「秩序」との関係性を考えます。

第3回  カオス・コスモス・ノモス(ピーター・バーガーとその宗教社会学理論)
 社会学者ピーター・バーガーによる宗教と社会との関係についての研究は、1960年代後半以降「宗教学」に強い影響を与えてきました。講義では、バーガーの主張に基づきつつも、「日常生活の現実(ノモス)が構成されることに宗教的な現実(コスモス)がどのようにかかわっているのか」ということを「カオス」との関係から考察すると同時に、こうした考え方の限界についても考てみます。

第4回  さかさま(儀礼における逆転とリミナリティ)
 宗教儀礼には、日常生活とは異なる秩序に従うという局面が生じる事例がたくさんあります。典型的なのは、日常生活の秩序が「逆転される」というケースで、祝祭的カーニバルや巡礼などで見られます。そうした具体的な事例のピックスを紹介すると同時に、こうした事例をどう考えるのか、宗教人類学者ヴィクター・ターナーらの研究に基づいて考察します。

第5回  神話の形態と論理(ジョルジュ・デュメジルと構造的分析への展開)
 宗教研究の分野では宗教学者ミルチャ・エリアーデや人類学者レヴィ=スロースらによる神話研究が有名ですが、デュメジルはそれらに先行して、「インド=ヨーロッパ語族」の神話について詳細な研究を行っていました。講義では、デュメジルの神話研究の理論的展開を追いつつ、宗教学における神話研究のいくつかを紹介すると同時に、その課題についても考察します。

第6回  王殺しと呪術論
 「神聖な王を殺す」という儀礼は、ジェームズ・フレイザーの『金枝篇』で有名な主題です。フランシス・コッポラ監督の映画『地獄の黙示録』と関連づけながら、「王殺し」という主題の呪術的背景を考察します。
(受講する前に、映画『地獄の黙示録』を観ておいてもらえると、講義の内容を理解しやすいと思います。)

第7回  宗教現象を撮影する
 わたしたちは、スマートフォンを介して「映像」に取り巻かれています。それゆえ、わたしたちの生活環境は「映像」との親密度がかなり高いわけです。宗教研究では、映像人類学などの分野と連携しつつ、宗教現象の「映像」が蓄積されています。今回は、グレゴリー・ベイトソンやマヤ・デーレンが撮影した「憑依儀礼」の映像作品を閲覧して、「宗教現象」を撮影し、記録することについて考えます。

第8回  憑依と厄祓い(バリ島の「悪魔祓い」)
 バリ島の宗教儀礼は憑依(トランス)が顕著に生じることで知られています。担当者の調査記録映像を閲覧しつつ、憑依が生じる儀礼が「悪魔祓い」と称される背景を探ってみます。

第9回  闘鶏と賭け
 バリ島では祝祭時に「闘鶏」が行われます。この「闘鶏」に注目して、それを文化分析にまで高めたのが人類学者クリフォード・ギアツの「ディープ・プレイ」という有名な論考です。この論考をとっかかりにして、「賭け事」や「試合(ゲーム)」と<儀礼性>との関係について考察してみます。

第10回  ビートルズとサイケデリック
 ビートルズの傑作アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の「サイケデリック性」を検討しつつ、1960年代後半から顕著になった「カウンターカルチャー」とその後の展開としての「スピリチュアリティ」との関連やその背景を考察します。

第11回  少女論(「女の子という身体」の特異性)
 ネパールのクマリ信仰は生きた少女を女神として崇める非常に稀有な信仰形態です。このクマリ信仰を起点に、宗教的な脈絡で「女の子」が特別な意味を持つことについて、民俗学的な巫女論や神学的・文化記号論的な天使論にも言及しながら、様々な事例や創作作品(アニメや映画など)を参照しつつ、考察します。

第12回  神様と出会う(春日若宮おんまつり)
 「春日若おんまつり」は長い歴のある神事です。「おんまつり」の行事は昼間に行われる行列が一般に有名ですが、奈良公園内に設置された「御旅所」では、夜間になってから非常に厳かで神秘的な芸能奉納が行われています(御旅所祭)。その神秘性は、明かりをほとんど落とした暗闇の中で若宮の神様が宮社へ戻る「還幸の儀」で頂点に達します。講義では神事の映像を閲覧しつつ、「神様」の存在性や芸能を奉納することの意味について考えます。

第13回  聖地と霊場
 「熊野」は世界文化遺産にもなっている聖地であり、霊場です。その背景には「熊野信仰」があります。講義では、「熊野信仰」の歴史や内容を考察しつつ、「聖地」や「霊場」の意味や構造を考えます。

第14回  供犠と贈与
 供犠論と贈与論で「聖なるもの」を論考したのはマルセル・モースです。モースの論考を起点にして、<聖なるもの>がどのように論じられてきたのかを追いながら、「宗教の本質とされる<聖なるもの>」の「在り様」について考察します。

第15回  総論(秩序とその変則)
 これまでの講義回の内容をもとに、<宗教>を「見慣れぬものを見慣れた領域へ<還元>する」というベクトルと、「見慣れたものを見慣れぬ領域へ<異化>する」というベクトルの交錯としてとらえて、講義全体をまとめたいと思います。

授業時間外学習 / Expected work outside of class

予習としては、各講義の主題に関して、予備知識として概要を調べておくことが望ましいです。
復習としては、講義で提供するプリントなどを精読するなどして、講義内容のさらなる理解のみならず、自主的に主題の「深堀り」に努めてもらいたいです。

成績評価の方法・基準・評価
Grading Policies /
Evaluation Criteria

方法 / Grading Policies

定期試験(筆記試験)の成績と平常成績で総合評価する。
定期試験(筆記試験)80%
平常成績(ミニッツペーパーの内容や授業への取り組みの態度など)20%

基準・評価 / Evaluation Criteria・Assessment Policy

①宗教学という分野での宗教現象の取り扱い方を理解できているか。
②講義で取り扱う事象が宗教学におけるどのような概念と結びつき、どのようなコンテキストで問題になっているのかを理解できているか。
③授業の各主題で取り上げた内容を受講者自らの関心・興味や経験などと関連づけて考察し、それを論理的に説得力をもって論述表現できるか。

教科書
Textbooks


指定しない。必読文献がある場合は、講義中に指示します。

参考書
References

マーク・C・テイラー編  『宗教学必須用語22』  刀水書房  ISBN97-88708-370-7  C3014

各主題に関してのさらに詳細な参考文献は、講義中に紹介する予定です。

フィードバックの方法
Feedback Method

ミニッツペーパーなどによる授業中での課題提出を行った場合、提出された内容について、講義時間内やLMSで講評・応答する予定です。
論述試験、もしくはレポートの論述内容について、適切な時期に解説します。

担任者への問合せ方法
Instructor Contact

授業日の授業前後に講師控室や教室で対応します。あるいはLMSのメッセージ機能でも対応します。

備考
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