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学部・研究科
Faculty/Graduate School
時間割コード
Course Code
65170
科目名
Course title
サブテーマ
Subtitle
セラミック材料化学
授業形態/単位
Term/Credits
クラス
Class
/2
担任者名
Instructor
荒地 良典
曜限
Day/Period
月3
授業概要
Course Description
到達目標
Course Objectives

授業種別 / Teaching Types

講義(対面型)

言語 / Language

日本語(Japanese)

授業概要 / Course Description

大半のセラミックスは金属酸化物であり,極論すれば金属陽イオンと酸化物イオンからなるイオン結晶である。金属陽イオンと酸化物イオンの大きさは異なり,さらに金属陽イオンの大きさも広範囲にわたるため,金属酸化物の結晶構造は複雑かつ多様である。さらに,イオン結晶であることが点欠陥の生成様式を複雑なものにしている。セラミックスには優れた電気的絶縁性,イオン伝導性,半導性をもつものがあり,その物性はバラエティーに富んでいる。こられ諸物性のすべてが,結晶構造と点欠陥の生成様式に大きく左右される。したがって,セラミックスの科学を学ぶための第一歩は,これら複雑な結晶構造の把握の仕方を学び,さらには点欠陥の生成様式を理解することにあり,次いで,これらが諸物性をどのように支配するかを学ぶ必要がある。

到達目標 / Course Objectives

 本科目を修得することによって,
(1)  セラミックスの複雑な結晶構造を把握・記述できるようになる。
(2)  どのような状況の下でどのような点欠陥がセラミックスに生成するかを予想できるようになる。
(3)  焼結や固相反応というセラミックスの製造に関わる基礎過程をイオンの拡散という視点で把握・記述できるようになり,さらには,焼結や固相反応を促進するためのプロセス設計ができるようになる。
(4)  電気伝導を,単に電流が流れると漠然ととらえるのではなく,キャリアの種類によって区別・把握できるようになる。
(5)  セラミックスでイオン伝導がおこりやすくするための材料設計ができるようになる。
(6)  セラミックスに半導体としての性質をもたせるための材料設計ができるようになる。
(7)  セラミックスの誘電性および磁性の仕組みのもとに材料設計ができるようになる。

授業手法 / Teaching Methods

・教員による資料等を用いた説明や課題等へのフィードバック
・学生による学習のふりかえり
・学生同士の意見交換(グループ・ペアワーク、ディスカッション、ディベート等含む)
・課題探究(プロジェクト学習、課題解決型学習、ケーススタディ等含む)

授業計画
Course Content

授業計画 / Course Content

I.  セラミックスの世界に入るための準備

(1)  セラミックスを構成する化合物の命名法: 第1週
【酸化物,炭化物,窒化物】日本語と英語の両方で書けるように;【単酸化物と複合酸化物】その違いは?

(2)  化学結合と結晶構造:第2〜3週
【イオン結合と共有結合】どのようなときにイオン結合性が高く,どのようなときに共有結合性が高いのか?;【最密充填構造の隙間位置】多くの場合,酸化物イオンの最密充填構造の隙間位置に金属陽イオンが入る;【配位数と配位多面体】金属陽イオンを中心金属イオンとする配位多面体が連結して結晶構造をつくる;【代表的な結晶構造】代表的な結晶構造を描くことができ,その名前を知っていなければならない。

(3)  セラミックスの状態図: 第4週
【化合物と固溶体】化合物と固溶体の違いは?;【2相共存状態と固溶状態】2相共存状態と固溶状態の区別はできているか?
II.  セラミックスの点欠陥:  第5週
【Kroger-Vink記号法】構成原子が帯電していることがセラミックスの点欠陥の生成を独特なものにしている;【固溶による点欠陥の生成】異種原子が母相に入っていくだけでは話は済まない;【不定比性と点欠陥】TiO2は実はTiO2-x,ZnOは実はZn1+xO;【不定比性の雰囲気依存性】不定比性は雰囲気によって変わってしまう。

III.  イオンの拡散と固相反応・焼結:  第6〜7週
【イオンの拡散係数】拡散係数の定義を確実に理解する;【拡散係数の温度依存性】なぜ拡散係数は温度上昇とともに増大するのか?;【拡散係数と点欠陥濃度】点欠陥の濃度によって拡散係数は変化する;【拡散係数と焼結・固相反応】なぜ焼結や固相反応の速度は温度上昇とともに増大するのか?

IV.  セラミックスの物性
(1)  電気伝導の基礎:  第8週
【電気抵抗と比抵抗】物質の電流の流れにくさを比べたいなら電気抵抗ではなく比抵抗で;【キャリアの概念】電荷を運ぶものがなければ電流は流れない;【キャリアの濃度・電荷・移動度】電気伝導度はキャリア濃度・電荷・移動度の積で決まる。

(2)  イオン伝導:  第9週
【キャリアとしてのイオン】イオンそのものが結晶格子中を移動する;【イオン伝導度を決定する因子】キャリアイオンの濃度が高く,電荷が大きく,移動度が大きいとき,イオン伝導度は大きくなる;【拡散係数と移動度】拡散係数が大きいほど移動度は大きい;【拡散係数に影響を及ぼす因子】結晶構造,点欠陥濃度,イオンの電荷が移動度におよぼす;【代表的なセラミックイオン伝導体】イオン伝導体には結晶構造に特徴がある。

(3)  電子伝導:  第10、11週
【バンド構造】;バンド構造から半導体と金属の特徴を知る【真性半導体】どのようにしてキャリア(電子,正孔)が発生するのか? 温度上昇とともに電気伝導度が増大するのはなぜか?;【不純物半導体(p  型半導体とn型半導体)】点欠陥を導入して電気伝導度の増大をはかる;【不純物半導体(不定比化合物)】雰囲気によっても点欠陥濃度は変化し,それにより電気伝導度が変化する。

(4)誘電性:第12週
 絶縁体と誘電体の違いは?  誘電体は電子絶縁体であるが,  分極によって電気をためることができる。その大きさである誘電率(比誘電率)がきわめて高いチタン酸バリウムBaTiO3は,  強誘電体としてコンデンサーに利用されている。その仕組みは?;【誘電性,  分極,  誘電分散】

(5)  磁性:第13、14週
磁性の起源は電子のスピンにある【電子磁石】。磁石は金属クリップを引きつけるが,  プラスチックを引きつけない。その理由は磁性の違いにある【常磁性,  強磁性,  反磁性】。また, フェライト磁石(Fe3O4)はどんな磁石か?

V.  到達度確認テスト:15週
これまでの内容についてどの程度理解できているか,  確認するためにテストを行う。

授業時間外学習 / Expected work outside of class

 講義中に提示される例題や問いを確実に解答できることが、講義内容が理解できたことの証となる。講義が行われたその日のうちに、全ての例題・問いが解答できることを確かめておくことが強く望まれる。

成績評価の方法・基準・評価
Grading Policies /
Evaluation Criteria

方法 / Grading Policies

定期試験を行わず、到達度の確認(筆記による学力確認)と平常成績で総合評価する。
筆記による学力確認(80%)、小テスト(20%)で評価する。小テストは採点後に返却し、解説する。出席をとるが、これは成績と出席回数の相関を調べるためのものであり、成績評価には加味しない。

成績評価方法が変更になった場合は、インフォメーションシステム等で連絡します。履修者数が多数になった場合には、成績評価方法を「定期試験(16週目)」に変更することがあります。
成績評価方法が変更になった場合は、インフォメーションシステム等で連絡します。

基準・評価 / Evaluation Criteria・Assessment Policy

講義で学習した内容の理解度を評価する。

教科書
Textbooks


ノート講義とする。理解を助けるためにグラフや図面をプリントにして配布し,  プロジェクターを写しながら講義を進める。また,  演習問題を行う。

参考書
References

A.R.  ウェスト  『ウェスト固体化学入門 基礎と応用』  講談社  978-4-06-154390-4
鈴木義和  『セラミックス科学』  講談社サイエンティフィク  978-4-06-520788-8
戒能俊邦・菅野了次  『材料科学  基礎と応用』  東京化学同人  978-4-8079-0634-5
アトキンス他著,田中勝久他訳  『シュライバー・アトキンス  無機化学 第6版(上),(下)』  東京化学同人  978-8079-0898-1
村石治人  新版『基礎固体化学 無機材料を中心とした』  三共出版  978-4-7827-0754-8
水田進,河本邦仁  『セラミック材料』  東京大学出版会  978-4130641630
柳田博明・永井正幸  『セラミックスの科学』  丸善  978-4765501293

フィードバックの方法
Feedback Method

・ミニッツペーパーの解説を翌週に行います。
・中間テスト(2回)を採点後に返却します。

担任者への問合せ方法
Instructor Contact

電子メールによって随時受け付けます。日時を事前に打ち合わせた上で面談すること。
・荒地: 第4学舎2号館研究棟2階  教授室、arachi@kansai-u.ac.jp

備考
Other Comments

【関連科目】 基礎化学2,物理化学3,結晶構造とX線回折,速度論と物質移動,半導体材料

【演習問題への取り組み】 演習問題を頻繁に課す。演習問題への取り組みは成績に加味しないが,この取り組みによって期末試験は容易に乗り越えられるはずである。

【学習・教育目標】B,  E

新型コロナ感染症の状況により,【成績評価の方法,基準・評価】,【担当者への問合わせ方法】は変更する場合がある。