- 学部・研究科
Faculty/Graduate School - 化
- 時間割コード
Course Code - 65192
- 科目名
Course title
サブテーマ
Subtitle - 無機材料化学
- 授業形態/単位
Term/Credits - クラス
Class -
- 春/2
- 担任者名
Instructor - 幸塚 広光
- 曜限
Day/Period - 月1
- 授業概要
Course Description
到達目標
Course Objectives -
授業種別 / Teaching Types
講義(対面型)
言語 / Language
日本語(Japanese)
授業概要 / Course Description
多くの無機材料は金属酸化物であり,極論すれば金属陽イオンと酸化物イオンからなるイオン結晶である。金属陽イオンと酸化物イオンの大きさは異なり,さらに金属陽イオンの大きさも広範囲にわたるため,金属酸化物の結晶構造は複雑かつ多様である。さらに,イオン結晶であることが点欠陥の生成様式を複雑なものにしている。無機材料には優れた電気的絶縁性,イオン伝導性,半導性をもつものがあり,その物性はバラエティーに富んでいる。こられ諸物性のすべてが,結晶構造と点欠陥の生成様式に大きく左右される。したがって,無機材料の科学を学ぶための第一歩は,これら複雑な結晶構造の把握の仕方を学び,さらには点欠陥の生成様式を理解することにあり,次いで,これらが諸物性をどのように支配するかを学ぶ必要がある。
到達目標 / Course Objectives
本科目を修得することによって,
(1) 無機材料の複雑な結晶構造を把握・記述できるようになる。
(2) どのような状況の下でどのような点欠陥が無機材料に生成するかを予想できるようになる。
(3) 焼結や固相反応という無機材料の製造に関わる基礎過程をイオンの拡散という視点で把握・記述できるようになり,さらには,焼結や固相反応を促進するためのプロセス設計ができるようになる。
(4) 電気伝導を,単に電流が流れると漠然ととらえるのではなく,キャリアの種類によって区別・把握できるようになる。
(5) 無機材料でイオン伝導がおこりやすくするための材料設計ができるようになる。
(6) 無機材料に半導体としての性質をもたせるための材料設計ができるようになる。授業手法 / Teaching Methods
・教員による資料等を用いた説明や課題等へのフィードバック
・学生による学習のふりかえり
・課題探究(プロジェクト学習、課題解決型学習、ケーススタディ等含む)
- 授業計画
Course Content -
授業計画 / Course Content
I. 無機材料の世界に入るための準備
(1) 無機材料を構成する化合物の命名法: 第1週
【酸化物,炭化物,窒化物】日本語と英語の両方で書けるように;【単酸化物と複合酸化物】その違いは?
(2) 化学結合と結晶構造: 第2〜3週 【イオン結合と共有結合】どのようなときにイオン結合性が高く,どのようなときに共有結合性が高いのか?;【最密充填構造の隙間位置】多くの場合,酸化物イオンの最密充填構造の隙間位置に金属陽イオンが入る;【配位数と配位多面体】金属陽イオンを中心金属イオンとする配位多面体が連結して結晶構造をつくる;【代表的な結晶構造】代表的な結晶構造を描くことができ,その名前を知っていなければならない
(3) 無機材料の状態図: 第4〜5週
【化合物と固溶体】化合物と固溶体の違いは?;【2相共存状態と固溶状態】2相共存状態と固溶状態の区別はできているか?
II. 無機材料の点欠陥: 第6〜7週
【Kroger-Vink記号法】構成原子が帯電していることが無機材料の点欠陥の生成を独特なものにしている;【固溶による点欠陥の生成】異種原子が母相に入っていくだけでは話は済まない;【不定比性と点欠陥】TiO2は実はTiO2-x,ZnOは実はZn1+xO;【不定比性の雰囲気依存性】不定比性は雰囲気によって変わってしまう
III. イオンの拡散と固相反応・焼結: 第8〜10週
【イオンの拡散係数】拡散係数の定義を確実に理解する;【拡散係数の温度依存性】なぜ拡散係数は温度上昇とともに増大するのか?;【拡散係数と点欠陥濃度】点欠陥の濃度によって拡散係数は変化する;【拡散係数と焼結・固相反応】なぜ焼結や固相反応の速度は温度上昇とともに増大するのか?
IV. 無機材料の電気伝導に関する基礎
(1) 電気伝導の基礎: 第11週
【電気抵抗と比抵抗】物質の電流の流れにくさを比べたいなら電気抵抗ではなく比抵抗で;【キャリアの概念】電荷を運ぶものがなければ電流は流れない;【キャリアの濃度・電荷・易動度】電気伝導度はキャリア濃度・電荷・易動度の積で決まる
(2) イオン伝導: 第12週
【キャリアとしてのイオン】イオンそのものが結晶格子中を移動する;【イオン伝導度を決定する因子】キャリアイオンの濃度が高く,電荷が大きく,易動度が大きいとき,イオン伝導度は大きくなる;【拡散係数と易動度】拡散係数が大きいほど易動度は大きい;【拡散係数に影響を及ぼす因子】結晶構造,点欠陥濃度,イオンの電荷が易動度に決定的な影響を及ぼす;【代表的な無機イオン伝導体】イオン伝導体には結晶構造に特徴がある
(3) 電子伝導: 第13〜14週
【真性半導体】どのようにしてキャリア(電子,正孔)が発生するのか? 温度上昇とともに電気伝導度が増大するのはなぜか?;【不純物半導体(p型半導体とn型半導体)】点欠陥を導入して電気伝導度の増大をはかる;【不純物半導体(不定比化合物)】雰囲気によっても点欠陥濃度は変化し,それにより電気伝導度が変化する
Ⅴ. 到達度の確認と解説: 第15週授業時間外学習 / Expected work outside of class
ノート、配布資料、参考書を読み返し、授業内容の理解に努めるよう復習をすること。
- 成績評価の方法・基準・評価
Grading Policies /
Evaluation Criteria -
方法 / Grading Policies
定期試験を行わず、到達度の確認(筆記による学力確認)と平常成績で総合評価する。
筆記による学力確認(80%)、小テスト(20%)で評価する。小テストは採点後に返却し、解説する。出席をとるが、これは成績と出席回数の相関を調べるためのものであり、成績評価には加味しない。基準・評価 / Evaluation Criteria・Assessment Policy
到達目標にある項目の知識と能力が講義と演習問題を通じて十分に獲得できているどうかを評価する。
- 教科書
Textbooks
ノート講義とする。理解を助けるためのグラフや図面をプリントにして配布する。
-
参考書
References A.R. ウェスト著 『ウェスト固体化学入門』 (講談社サイエンティフィク)
足立吟也編著 『固体化学の基礎と無機材料』 (丸善)
田中勝久著 『固体化学』 (東京化学同人)
村石治人著 『基礎固体化学』 (三共出版)
ジョン・ウルフ編、永宮健夫監訳 『材料科学入門Ⅰ〜Ⅳ』 (岩波書店)
柳田博明 『セラミックスの化学第2版』 (丸善)
水田進,河本邦仁 『セラミックス材料科学』 (東京大学出版会)
佐久間健人 『セラミック材料学』 (海文堂)
キンジャリー他著,小松和蔵他訳 『セラミックス材料科学入門』 (内田老鶴圃)
アトキンス他著,田中勝久他訳 『シュライバー・アトキンス 無機化学 第4版』 (東京化学同人)
- フィードバックの方法
Feedback Method 小テストを採点して返却する。
- 担任者への問合せ方法
Instructor Contact 電子メールによって日時を事前に打ち合わせた上で担当教員と面談すること。
・幸塚:第4学舎2号館研究棟2階 幸塚教授室、kozuka@kansai-u.ac.jp
- 備考
Other Comments 【演習問題への取り組み】 演習問題を頻繁に課す。演習問題への取り組みは成績に加味しないが,この取り組みによって「到達度の確認」時の学力確認は容易に乗り越えられるはずである。