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学部・研究科
Faculty/Graduate School
時間割コード
Course Code
30651
科目名
Course title
サブテーマ
Subtitle
政治経済学1
授業形態/単位
Term/Credits
クラス
Class
/2
担任者名
Instructor
北川 亘太
曜限
Day/Period
金1
授業概要
Course Description
到達目標
Course Objectives

授業種別 / Teaching Types

講義(対面型)

言語 / Language

日本語(Japanese)

授業概要 / Course Description

本講義では、学部で一通りの経済学の基礎(例えば、ミクロ経済学入門やマクロ経済学入門など)から一歩進んで新しい経済学を学ぼうとする学生に向けた「制度経済学institutional  economics」の講義である。制度経済学(institutional  economics)とは、市場の他にも人々の経済活動を調整するもの、つまり制度(institution)があることに注目し、市場と制度に基づく経済調整の特徴やその変化の傾向、問題点(経済調整の機能不全)を明らかにし、そして、制度修正の方向性を提示しようとする学問である。
私たちは、家庭で生活し、文化的・政治的な活動をするのはもちろんのこと、家庭や学校、職場で培った技能や知識を活かして生産し、収入を得て、それを消費したり投資したりするといった経済的な活動を行っている。社会的分業と企業内分業が発展した現代社会における経済活動のなかには、個人が単独で行えるものはほとんどなく、ほぼすべての経済活動は、相手ありきの相互行為(trans-action)、つまり取引(transaction)になっている。取引の例は、市場での商品の売買、企業内での命令と服従にもとづく賃労働、そして、政府や公益企業が供給する様々な公共サービスの利用など枚挙にいとまがない。これらの取引は、企業間取引においては独占禁止法や様々な取引慣行によって、賃労働関係においては労働法(労働契約法、労働基準法、男女雇用機会均等法、最低賃金法など)や様々な労働慣行によって、公共サービスにおいては議会などが決める公共サービスの受給資格や料金などに関する法や規則によって、安定的に調整されている。言い換えれば、人々の間の取引は制度化(institutionalize)されている。
本講義が対象とする制度とは、このように、諸個人、企業、国家などの経済主体の取引を調整する言語化された/されていないルールのことである。その例として、法律、合意された協約や規則、慣習(社会である程度共通してみられるような思考と行動)、規範が挙げられる。さらに、経済を論じるうえでその存在と機能が自明の前提となっている貨幣自体もまた、制度と切り離すことはできない。標準的な経済学では、貨幣をあたかも金(きん)などの商品のように捉えているが、貨幣は商品ではなく、銀行システムなどの諸制度(「債務システム」)によって創造され、流通している数字の記録である。企業が銀行から資金を借り入れて投資をおこなうとき、銀行のシステムには新しい債権債務関係が記録(創造)される。この信用創造すなわち貨幣の創造は、借り手が将来の事業収益を予測して銀行を説得し、銀行は貸倒れのリスクを評価して貸出の可否や利子率や担保などの貸出条件を判断するという、両者の将来予測をめぐる交渉の結果(合意)として生じる。この貸出金は、銀行のシステムにある借り手の口座に記録される。そして、売買取引の決済は、ある銀行のシステム内、あるいは、全銀ネットや日銀ネットという決済システムを介して処理される。このように、貨幣の創造と流通は、信用取引(現在の貸出と将来の返済をめぐる合意)と債権債務関係を記録する銀行システムによって成り立っている。そのように考えると、貨幣はモノではなく制度そのものといえる。
 本講義では、目まぐるしく変化し、課題が山積している日本経済ないし世界経済の仕組みと動向を理解するために、制度の視点からそれらにアプローチ(接近)し、将来への展望を考えていきたい。特に、政治経済学1では、「制度経済学」とは何か、「制度としてのおカネ」とは何か、「望ましい制度変化(合意形成)プロセス」は何か、を重点的に考えていきたい。それらをより理解し、応用するために、新聞記事などを活用して時事的な出来事も取り上げ、制度経済学の観点から論評することもある。

学位授与方針との関係 / Related Diploma Policy

(経済学部)
1.知識・技能
  ① 国際化と情報化の進展する現代にあって、社会に生じる多様な問題を総合的に理解できる幅広い教養を有している。
  ② ①の問題の解決策を経済学の立場から提示できる、あるいはその内容について経済学の基本原理及び専門知識を活用し理解できる。
2.思考力・判断力・表現力等の能力
  ①経済学に関する幅広い知識を活かして溢れる情報の中から真に必要な情報を取得する能力、グローバルな視野を持って時代を切り拓くための国際性を身に付けている。
  ② いかなる状況の変化に対しても深い洞察力を持って問題解決に向け「考動」できる。
3.主体的な態度
  自身の役割に責任を持ち、他者と協働しながら経済学を体系的に修得している。そして、経済が直面する課題を自ら発見し、その解決に向けて主体的に取り組み、社会に積極的に貢献しようと努力できる。

到達目標 / Course Objectives

本講義の到達目標は、次の3つである。(1)「制度経済学」の観点から歴史的事例や時事的な出来事を論評できるようになる。(2)常識とは異なる「制度としての貨幣」という「おカネ観」を理解し、この「おカネ観」にもとづいて今日の金融政策・財政政策・経済政策を具体的に論評できるようになる。(3)制度をつくったり変化させる折衝の過程において交渉当事者がどのような規準にのっとって合意形成するのが望ましいかを考え、その規準に照らして歴史的事例や時事的な出来事を論評できるようになる。

授業手法 / Teaching Methods

・教員による資料等を用いた説明や課題等へのフィードバック
・学生による学習のふりかえり

授業計画
Course Content

授業計画 / Course Content

「政治経済学1」は基本編として、以下のトピックを扱います
・講義の目的、進め方、評価方法、注意点の説明(第1回)
・制度経済学とは何か(おおよそ第1回から第6回)
・「フォーディズム」における経済の好循環を理解する
・「認知資本主義cognitive  capitalism」における経済のしくみと不安定性を理解する
・制度としての貨幣とは何か(おおよそ第7回から第12回)
・貨幣は債務システム(財政・金融制度)のもとでどのように生成・譲渡・消滅するか
・債務システムのなかの国債を理解する
・社会的合意としての予算を理解する
・社会的にみて望ましい制度変化プロセスとはどのようなものかを考えてみる(おおよそ第13回から第15回)
・合意形成において交渉当事者が守るべき「適正さ規準reasonableness  criterion」を理解する
・その観点から労使対立などの事例を検討する

授業時間外学習 / Expected work outside of class

講義後にその回のレジュメをゆっくりと読み直し、そこで示されている標準的な経済学とは異なる見方や常識的ではない見方を理解するよう努めること

成績評価の方法・基準・評価
Grading Policies /
Evaluation Criteria

方法 / Grading Policies

定期試験を行わず、到達度の確認(筆記による学力確認)と平常成績で総合評価する。
アンケート(感想・質問・コメントの質に応じて評価する)20%、授業内での中間テスト40%、到達度の確認40%。履修者数が多数になった場合には、成績評価方法を「定期試験(16週目)」に変更することがあります。
成績評価方法が変更になった場合は、インフォメーションシステム等で連絡します。

基準・評価 / Evaluation Criteria・Assessment Policy

(1)「制度経済学」の観点から歴史的事例や時事的な出来事を論評できるようになったか。(2)常識とは異なる「制度としての貨幣」という「おカネ観」を理解し、この「おカネ観」にもとづいて今日の金融政策・財政政策・経済政策を論評できるようになったか。(3)制度をつくったり変化させる折衝の過程において交渉当事者がどのような規準にのっとって合意形成するのが望ましいかを考え、その規準に照らして歴史的事例や時事的な出来事を論評できるようになったか。

教科書
Textbooks

藤田真哉・北川亘太・宇仁宏幸  『現代制度経済学講義』  (ナカニシヤ出版)  978-4-7795-1708-2

授業中に教科書の図表や記述を見るため、教科書を必ず購入してください。教科書を購入・持参しなかった場合の理解度の低下については関知しません。

参考書
References

フィードバックの方法
Feedback Method

前回の講義での質問(のうち取り上げるに値するもの)については次回の講義の冒頭で解説します。

担任者への問合せ方法
Instructor Contact

授業後に尋ねてください。

備考
Other Comments

(1)大切なことを口頭で説明したり板書したりもするので、必ずノートをとること。
(2)受講生の関心・意欲、および、現実の政治経済の動向に応じて、授業計画を変更することがある。講義の順番、内容、進捗速度、試験問題を変更することがある。
(3)私語をする学生には学生証を提示させ、減点する。(実際に減点したことがあります)
(4)教員の指示に従わない場合、退出を命じることがある。